開業した日、そして税理士が嫌いになった日

私が開業した日は税理士が嫌いになった日

 

本日7月1日は片口雅之の開業日になります。

 

正確には6月30日に職を失い強制的に開業したこととなった日。開業届出の開業日の日付が7月1日となっただけの日。

 

正直に言うと、嬉しさは感じない日です。

何の記憶もない、思い出もない開業日です。

最後に勤めていた税理士事務所に車で突っ込んで自分も死んでしまおう、と考えたこともありました。

 

自分の中ではそれから2年後に開業した気持ちが強いです。開業を受け入れるのに2年間という時間を要しました。空白の2年間です。

 

同時にこの開業日は税理士を嫌いになった日とも言えます。

 

仕事が大好きだった私は、どれだけ仕事しても飽きることはなく、何時間仕事しようが倒れるまで仕事がしたいような人間でした。

 

その仕事にやる気が出なくなり、毎日、夜遅くまで起きて、お昼ごろに起きる。そんな生活が開業当初から始まりました。片口雅之個人の破滅の始まりです。

 

順風満帆な開業でも、望んでした開業でもない。

もうサラリーマンなんてごめんだ、同じことを繰り返すのはもういい、どこへ勤めても同じ。

税理士という仕事に嫌悪感を抱いていました。しかし、私に出来るのは税理士業のみ。

 

だから「税理士業」として開業した。

とても後ろ向きなスタートです。

 

誰かのために、とか

社会のために、とか

貢献したい、とか

 

前向きな気持ちはありませんでした。

あったかもしれませんが、胸の奥、ずっと奥にしまって取り出さないようにしていました。

 

 

自分さえよければそれでいい

 

日本料理店をやっていた父親のお金で苦しむ姿を見てきた私は、父親のような人を助けたいと思い、税理士になりました。

 

その力になれるのなら、熱が出ようが、どれだけ残業しようが構いませんでした。それが生きがいだったからです。私が税理士になった目的だからです。

 

しかし、リアルな世界では必ずしもそう思う人ばかりではない。自分の想いとは別の力が働き、私は外に放り出されたのです。

 

正直な話、その後、自分自身も自分のことしか考えられなくなりました。自分が食えればいい、自分さえよければいい、そんな日々が続きました。

 

外面は良かったので、仕事はポツポツと増えていき、一人食っていくくらいはどうにでもなりましたが、満足感も喜びも感動も何もありません。残るものは無です。お客様の前では笑い顔を作りますが、心は笑っていません。

 

考えていることは自分のことばかり。

 

そんな生活が1年以上続き、

何のために生きているのか?何のために働いているのか?もうどうでもいいし、どうにでもなれ。そんなことを考えていました。

 

周りからは「先生、先生」と呼ばれるのに自分の中では「クソ人間」としか思えなかった。惰性で生きているだけで、自分を偽っていきている。自分を嫌っていました。

 

それでも、根は真面目ですし、仕事も元々好きですから

与えられた仕事はきっちりこなします。

感謝されたり、頼りにされたりすることも増えてきて、昔のように自分の好きなように仕事をしたい、変わりたい、変わらないといけないと思うようになりました。

 

開業してから1年半は経っていたでしょうか。

 

 

人生の転機はいつも人がもたらしてくれる

 

そんな時、お客様から社会保険労務士を紹介して欲しい、と言われました。

 

当時、付き合いのあった社会保険労務士の先生はいませんでしたが、一人だけ頭の中に思い浮かびました。

 

サラリーマン時代の先輩が、社会保険労務士として独立されていました。何故か、その先輩の顔が浮かびました。

 

ただ、問題がありまして、私はその先輩のことがあまり好きではありませんでした。

 

当時所有していたガラケーに、先輩の電話番号があることを確認するも電話をする勇気が出ません。

 

出来れば電話したくないですが、この先輩であればお客様が求める問題を解決できそうだと思えました。

 

電話をしないまま、お客様の会社から自宅に車で戻り始めました。電話する?しない?電話する?しない?と頭の中を駆け巡ります。

 

電話しよう!と決め、途中で車を止めて、勇気を出して電話しました。出てくれるか不安でしたが、電話に出た先輩はいつも通り。

 

お客様を紹介したい旨を伝え、少し近況を話して電話はすぐ終わりました。

 

その後、仕事の紹介の御礼がしたいと言われ、食事をご馳走になることになりました。数年ぶりの再会です。先に独立していた先輩から色々、話が聞けたのは、とても良かったです。

 

その中で今でも忘れられない、私を変えてくれる言葉をかけてくれました。

「ぐっち、お前はどこへ向かってんの?」

私は先輩からぐっちと呼ばれていました。

 

その問いに、全く答えることが出来なかったです。

 

税理士になることを夢見て、大学院を中退した日。社会人になり希望に満ち溢れていた日々。税理士になり大きな責任と役割を得た日。

 

色々、想うことがありました。

私はどこへ向かっているんだろうか?

 

全く見えていませんでしたし、見ようともしていませんでした。

 

 

税理士は素晴らしい

 

その後、色々ありましたが、開業から2年ほど経った時、ようやく開業のスタート地点に立つことができました。

 

周囲からは順風満帆に見られることがありますが、決してそんなことはありません。

 

望んでした独立でもないのに、こうやって今でも多くの仲間や仕事に囲まれて、生きていられる。

今では税理士になって本当に良かったと思いますし、税理士という職業はとても素晴らしいものだと思います。

 

たくさんの嫌だと思った経験は、今、自分が事務所経営をする上でとても役に立っています。

そう思うと、経験して良かったと思えます。

自分は同じようにしないようにしよう。そう思い、常に自分と向き合っています。

 

私が経験してきたことを、少しでもお客様に還元できるようにしていく。

それが私の今の役割だと思っています。

 

ちなみにですが、嫌いだった先輩には「あの時は嫌いでした」と正直に告白し、今では笑い話として、一緒に時々飲みに行く良き先輩となっていくことを付け加えておきます(笑)

 


 


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