【第10話】みやび君、納税資金が足りない

 

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ネット上にある情報をかき集めて確定申告書を作成した、みやび君。

 

初めて確定申告をする人たちが通る道です。ただ事業所得の確定申告はとても難しいです。かなり難しいです。

 

サラリーマンが医療費があるから税金を還付するために確定申告をする、という確定申告とは難易度が違います。もちろん、確定申告自体は誰でも出来るように出来ていますが、事業所得の場合は確定申告書を作る手前の段階が難しいのです。

 

どこが難しいかと言うと、事業をやっている人が一度は聞いたことがある損益計算書や貸借対照表を作るところが、とんでもなく難しいのです。恐らく素人には作ることは不可能に近いと思います。

 

でも、自分で確定申告をやったのに税務署からは何も言われないじゃないか!?と言われることが時々ありますが、何も言われないのではなく、指摘するまでもない規模、指摘しても大した税収にならない規模と思われているだけです。

 

簡単に言えば「間違っていると想定されるが、費用対効果が望めないので無視する」ということです。

 

恐らく、みやび君が作成した確定申告書もそのレベルでしょう。

 

 

【第10話】みやび君、納税資金が足りない

 

ようやく完成した確定申告書。徹夜して仕上げた確定申告書。

 

夏休みの宿題が終わった時の解放感。あの何物にも代えがたい感動を"私がこれから支払うであろう所得税という忌々しい税金"に完全にブチ壊された。何故、通帳に入っているお金より多い税金の支払いがあるんだ!と怒りわめいていると、妻が声をかけてきた。「友人に相談してみたら?」

 

「税理士に何が出来るって言うんだ!」

 

と一蹴。私の怒りは収まらない。

誰に文句を言えばいいのか分からない、怒りのやり場がない。

 

この世の中は狂っている。サラリーマンの時には何も思わなかったが、こんなに税金を払うことに嫌悪感を感じたことはない。何のために税金を払うんだ?もし確定申告しなければ払わなくてもいいのか?もし払わなければどうなるんだ?1回くらい確定申告しなくても大丈夫か?何か出来ることはないのか?

 

怒りが収まらず咄嗟に友人の経営者に連絡をとった。一部始終を話した。怒り狂っている私の状況をくみ取ったのか、友人はいつもと様子が違っていた。

 

「そうか。そうだよな。腹立つよな。税金は払いたくないよな。正直俺だって、今もそう思う時はあるよ。でもな、税金はコストなんだ。税金を払わないとキャッシュは増えないと税理士にいつも言われているよ」

 

優しく接してくれる友人。友人も税金に苦しんだときがあるのが伝わってきた。税金を払えばキャッシュが増えるというけど、通帳に入っている現金より税金のほうが大きいことを伝えた。

 

「そうなのか?そんなことあるのか?俺はそういうのはなかったぞ。どういう仕組みなのかちょっと分からないけど、それは困ったな」

 

親身になってくれる友人のお陰で私の気持ちが落ち着いた。友人に話しながら私は娘の将来のために積み立てているお金に手をつけることを考えていた。妻に内緒でこっそり子供用の通帳を確認するとお金はある。これなら税金を払える。安堵したと同時に罪悪感を感じる。

 

このお金を使おう。そうすれば、問題が解決する。でも、でも、でも。頭の中が混乱して、何が正解なのか分からない。

 

結局1人では罪悪感に立ち向かえず、素直に妻に相談することにした。ついさっき妻に怒鳴り散らしたばかりで声をかけづらいが私の気持ちは焦る一方だ。

 

「さっきはごめん」の一言も言えず「娘の預金を使っても良いか?」とぶっきらぼうに聞くと「いいよ。ちゃんと返してね」と迷う様子のない返事をもらった。私の今の状況を見透かされているようだ。

 

ほっと一息ついていると妻が突然話しかけてきた。「さっきのことだけど、一つだけ条件があるの」怖いな。背筋が凍る。脇に嫌な汗を感じるよ。こういう時は嫌な予感しかしないものだ。

 

「あなたの作った確定申告とかにケチをつけるつもりはないのだけど、友達の税理士に見てもらってほしいの」

 

なんだよ、そんなことかよ。緊張感のある自分を悟られないよう、静かに「分かった」と返事。

 

妻の方から税理士へ連絡してもらい、後日、一緒に食事をすることになった。

 

そこで、私は自分の作った確定申告書を見てもらった。税理士は色々思うところがあるようだが、私の性格を知ってかあまり何も言わなかった。ほとんど妻と妻の友人である税理士の昔話を聞かされて食事会は終わった。

 

ただ、税理士から唯一言われたことに私は衝撃を受けた。震えた。現実を受け止められないし、怒りがわいてくる。

 

何なんだ、どいつもこいつも。なぜ私の邪魔ばかりするのか。なぜ、こんなにも上手くいかないのか。なぜ、こんなに知らないことばかりあるのか。

 

なぜ、誰も教えてくれないのか。なぜ、こんなにも分かりにくいことばかりあるのか。なぜ、金がないのに金を払わないといけないのか。

 

私が確定申告で計算したのは所得税。他に住民税や事業税の支払いもあるらしい。ついでに言えば、健康保険料も保育料もこれまで以上に上がるらしい。

 

税理士からその金額を聞いたが、娘のために貯めたお金だけじゃ足りない。

 

唯一の救いは、所得税以外は後から支払いがあるらしい。所得税は確定申告の時に一緒に払うが、それ以外は後。

 

後?あと?なんで?

いやいや、そんなことより、今すぐに払わなくていいなら本当に助かった。

 

どうなってんだ、この日本は!

 

がんばれ!みやび君

 

 

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個人事業主を経験し所得(利益)を出し、税金を払ったことがある人は分かると思いますが、いつも税金を払っているような感覚があると思います。

 

所得税の支払いが終わったら消費税、住民税、事業税、予定納税?健康保険?いつもいつも税金を払っている。

 

ただですね、

サラリーマンの時は、毎月の給料から所得税と住民税が天引きされていたはずなので、毎月税金を払っていた(会社に預けていた)はずなんですが、自分の通帳から支払われるわけではなく、給与から自動的に引かれるため払っている感覚がないんです。

 

知らなかっただけなんです。知らないほうが徴収する側からしても面倒なこと言われないので良いですよね。

 

サラリーマン時代には税金を払う感覚がなかったのに、事業者になった途端に税金を払う感覚が生まれ、税金に対して嫌悪感を抱く人が増えます。

 

とにかく

サラリーマンの時は会社が代わりに全部やってくれていましたから楽なんですよ。事業者になってみて、全て自分でやらなければいけないし、分からないことが多すぎる状況かと思います。

 

分からないからといって誰かが助けてくれるわけでもなく、自分でやるしかありません。

 

税金というのは本当に分かりづらいものです。

 

税理士ですら難しいと感じるのに、普通の方にとって簡単なわけがありません。

 

まず、確定申告書は所得税と復興特別所得税を計算するための書類です。

この確定申告書が都道府県や市区町村に届けられ住民税や事業税を役所のほうが計算して、あなたに請求してくる仕組みなのです。

 

つまり、所得税は自分で計算してね!その計算を確認したら住民税と事業税は役所のほうで勝手に計算して税金の請求をするからね!という仕組みになっています。だから、所得税は確定申告の後すぐに払うのに対して、住民税と事業税は後から支払いがやってくるのです。

 

役所も計算する時間が必要ですから。

 

その他にですね、確定申告書を提出した後、国民健康保険料の金額も確定申告書に基づいて計算されるんですよ。児童手当も、保育料などもです。

 

作り方もよく分からない確定申告書から自分自身に関わる大事なことが勝手に決められていく仕組みになっています。

 

怖くないですか?

 

確定申告書の作り方を知っている事業者の人っていますか?適当に作るくらいなら誰でも出来るでしょうが、作ったそれが「合っているのか、間違っているのか」「ほかに方法はあるのか、ないのか」分かる人はほとんどいないと思います。

 

そして、よく分からないまま作った確定申告書で役所が勝手にあなたの大事なことを決めていく。これが日本の事業者に与えられた環境です。

 

理解しがたいこの制度に憤りを感じて、そもそも確定申告をすることを放棄する人や、適当に数字を埋めて税金を払っている人が存在するのではないでしょうか。

 

そして、その多くは税務署から指摘を受けることはありませんが、それでも一定数の人は税務署から指摘を受けて、その後に多額の税金を払うことになります。

 

知らなかった、聞いていない、教えてくれなかった、どのような言い訳も通じません。だって法律で決まっていますから。

 

赤信号なのに横断歩道を渡って車に引かれたら、赤信号を無視した人も悪いと分かるのですが、これが確定申告になると教えてくれない人が悪い、制度が難しいのが悪いと人のせいになります。税理士の仕事をしていて、この難しい税金の世界を知っているからこそ、人のせいにしたい気持ちも分かります。

 

ただ、気持ちは分かるのですが、ルールはルールですから、嫌なら日本を出るしかないのです。もしくは、税理士を顧問につけて正々堂々と戦うしかない。

 

我々税理士は事業者に多額の税金を納めて欲しくて仕事をしているわけではありません。

 

自分自身も税金を払っている身、そしてその税金がどのような計算で、どういう変遷をだどって出来てきたのかを知っている身として、事業者の気持ちはよく分かります。時には税金の世界が理不尽だと思うこともあります。

 

だからこそ、納税者の人たちには最低限の納税で済むように、毎日頭を悩ませています。時には税金を払ったことが良い場合もありますし、とにかく払わないことを選択することが良い場合もある。ひとりひとりの状況に合わせて適切な判断をしていくのが、我々税理士なのです。

 

売上があって、毎日忙しい。それなのにいつも支払いに追われて、いつまで経っても苦しいままで現状が変わらない。そのような人は、一度、税理士に聞いてみて欲しいです。

 

今自分に何が起きているのか、何故そうなるのか。それが理解できるまで税理士と付き合ってみることをお勧めします。

 

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■過去記事

【第0話】がんばれ!みやび君

【第1話】みやび君、起業する!

【第2話】みやび君、税理士に相談する

【第3話】みやび君、お金を借りる

【第4話】みやび君、創業計画書を描く

【第5話】みやび君、開業する

【第6話】みやび君、挨拶周り

【第7話】みやび君、初月の売上に驚く

【第8話】みやび君、確定申告が近づく

【第9話】みやび君、無料の情報を集めて確定申告書を作成

 

■次回記事

【第11話】みやび君、計画を立てる

 


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