【第16話】 みやび君、時間について考える

 

みやび君は、経営者の大先輩である小太り君に相談した。そこで得たヒントをもとに、自分が作った請求書を眺めてみる。

 

なんと、働く時間を長くすれば売上が増えるというプラン以外にも、単価をあげれば売上が増えることに気が付いた。

 

いや、でも、待てよ。

 

そんなこと出来るわけがない!と、まず頭の中に浮かんだ疑念。

 

これは、多くの人が浮かぶ疑念だ。その価格だから仕事を受注できている。そう思い込んでいるのだ。

 

しかし、世の中を見渡して欲しい。自分より安く受けている人もいれば、高く受けている人もいる。

 

その違いは何なのか?人は価値をどう定義するのか。

 

さて、続きをみていこう。

 

 

【第16話】 みやび君、時間について考える

仕事の価値(自分の価値)について考えるようになったみやび君。

 

今までは、言われた仕事をこなすだけだったが、自分の頭で色々考えるようになった。なぜ、自分の単価はその金額(言われた金額)なのか?

 

答えはわからないが、そんな疑問をもったまま今日も現場に出勤した。

 

現場ではいつも通りの流れで仕事が流れていく。

15時、休憩時間に仕事仲間と談笑していると「お疲れ様です」という声が聞こえる。

 

水道業者のS君だ。

 

S君はいつも現場の終わりである17時前に帰っていく。いつもの光景だが、今日は何故か気になった。

 

小太り君に聞いてみると

「S君は専門職だからいいんだよ。彼には水道管の工事を委託しているから」

 

自分は8時に現場に到着して現場の終わる17時まで仕事である。

(サラリーマン時代と実はそんなに変わらない)

 

自分が15時で帰ると言ったらその分、日当が下がるのだろうか?

そんなことを冗談交じりに小太り君に聞くと「別にいいじゃない?任せたい仕事が全部終わっているなら満額払うよ」

 

!!!

 

どういうことだ。そんな発想なかった。仕事後、詳しく小太り君に聞くと、どうやら【1日当たりの日当で頼む常用】と呼ばれるものと【責任者から指定された業務のみをこなす請負】と呼ばれるもの、があるとのことだった。

 

S君は請負で、自分は常用ということか?どっちの方が儲かるんだろう?

 

考えてみた。

 

今の常用だと、時間とお金を交換していることになる。メリットは必ずお金が手に入ること。時間さえ確保できれば売上も確保できる。

 

デメリットは時間が拘束されてしまう。

 

では、請負はどうだろうか?

 

請負の場合は自分がした仕事とお金を交換?

時間に縛られない反面、自分にしか出来ない価値を提供できないと仕事が受注できない気がする。

 

一人で考えた結果、どっちが儲かるのか分からなかった。

 

家に帰り、妻にも相談した。

最近は仕事であった嬉しかったこと、苦しかったことを妻に話すようにしている。

 

今までは一人で抱え込んでいたが、妻に話すと頭が整理され落ち着く。そして妻もそれを喜んでくれている。

 

仕事であった苦しい話を聞いて、嬉しそうにしている妻は女神だ。

 

「毎月、ちゃんと定額のお金が手に入るのもいいけど、それだと忙しい状況からは抜け出せないわよね」

 

妻が代わりに整理してくれることもあった。

 

家族団らんの食事が終わると、久しぶりに友人に電話をしてみることにした。友人は直ぐに出てくれ、悩んでいることを一部始終伝えた。

 

「なるほど。お前の仕事は、そういうビジネスモデルになっているのか。どっちも旨味があるし、どちらも捨てがたいよね」

 

友人は一段も二段も上から見た景色で相談に乗ってくれた。他人の意見に聞く耳を持たなかった以前とは聞こえ方が変わったのを感じた

 

今の状況を何としてでも打破したい。

 

「でっ、お前はどうしたいんだ?」

 

それが分からないからお前に相談しているんだろうが!といつもの感情が自然に沸き上がったが、今の私は違う。

 

「それってどういうこと?」と尋ねると、

 

「お前はどこを目指しているんだってこと。さっきの話、正直、どっちも正解だと思うんだよね。お前がどうしたいかって話じゃないの?」

 

自分がどうしたいか?

 

「それはそうだけど…」といいつつも、正直ピンとこない。自分がどうしたいかなんて考えたことがない。起業することだけを考えていた。そして、それを叶えた。起業すればサラリーマンの時より稼げて、いい車にのって、いいご飯食べて、幸せになれる。そのくらいのことしか考えてこなかった。

 

しばらく沈黙していると、その空気を読み取った友人は「じゃあどうするか決まったらまた連絡してよ。じゃあね。」と言って電話を切った。

 

答えが出ないまま相談は終わった。正直冷たいやつだなと感じた。俺がこんなに悩んでいるのに。アドバイスくらいくれよ…。

 

翌朝、昨日の友人との電話の内容を妻に伝えた。

 

「こっちが真剣に相談しているのに冷たいやつだよな」と妻に愚痴るように言うと「そう?私はそうは感じないわよ。小太りさんと同じことを言ってるじゃない」

 

妻から返ってきたのは意外な反応。

 

「私はあなたの仕事のことはよく分からないけど、結局どんな仕事をするかって正解はないってことでしょ?成功の形やそれが成功かどうかの基準って人それぞれってことなんじゃない?だから、小太りさんも友達もあなたに何も言わなかったんじゃない?二人ともヒントもくれてるし、余計な事言わない分とっても優しい人だと私は思ったよ」

 

基準は人それぞれ。なるほど。

 

答えが出せないということは、そもそも自分の中で、何が成功なのかという基準が曖昧だったってことか。確かに、事業を始めたときも、何となく開業したいっていう想いが先行していた気がする。

 

妻には感謝の気持ちを伝えて、この話は終わりにすることにした。妻も私にはこれ以上、口を挟んでこなかった。

 

その晩、ベットに入り自分の目標を立てることにした。

まず、現状の振り返りから。

 

①収入について

自分の現状には決して満足していない。社長って言ったらベンツとかレクサスとか乗るものだ。もっと儲けないと。自分のわがままに付き合ってくれた妻の為にも、こんなところでは終われない。

 

②時間について

正直、働く時間さえ増やせば収入はもっと増える。ただし、限界もある。家族も大切にすると誓った。収入は増やしたいが、働く時間はこれ以上増やせない。

 

ということは、やっぱり単価を上げるしかないのか。

単価を上げるためには、安い常用の仕事はしたらダメだよな。

 

1年前必死に営業して、やっと受注した仕事。これをやめるには正直勇気がいる。お金が足りなくなる気もする。

 

でも、俺はこのままでは終われない。俺のイメージする社長はこんなもんじゃない。

 

「やめよう」

 

そして、新しく受注する仕事は、高単価になる可能性がある常用ではなく請負で探す。

 

これが出来れば、俺の目指す社長に近づけるはず!今日はここまで。方法はまた明日考えよう。

 

考えながら眠りについた。

 

朝目覚めと同時に、疑問がわいてきた。

いくらの単価で受注すればいいのか?売上がいくらになったら俺はベンツに乗れるんだ?

 

誰か教えてくれー!

 

がんばれ!みやび君!

 

 

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起業する人は優秀な人が多いですから、仕事ができます。仕事ができるからこそ、起業したとも言えます。

 

だから人より「綺麗に、正確に、早く」仕事ができます。

 

起業当初はこのスキルは大事です。自分を知ってもらい、自分を売る段階で人より「汚く、不正確で、遅い」仕事内容であれば誰もあなたに依頼しません。

 

しかし、仕事が増えるにつれて、この能力が逆に成長を阻害してしまいます。

 

例えば、みやび君がとった策がまさにその通りです。

 

何とか食っていく分の売上はすぐに上げられたが、税金のことを考慮していなかったせいでお金が足りなくなった。足りなくなった分は、より働くことで賄おうと思った。

 

こうやって起業家の多くは自分のやる仕事を、より多く、より早くすることで成長をしようとします。

 

これが一番手っ取り早いですし、これまでやってきたことの延長線上でできます。すぐに結果が出ますし、仕事が好きな人はこの戦略はありだと思います。

 

しかし、みやび君のように、その戦略で失敗する事例もあります。みやび君は事業を一人だけでやっていますが、仕事は人生という一部でしかありません。家族の協力なしに仕事をやり続けられませんし、長続きしません。みやび君はこれを身をもって経験しました。

 

貴重な経験だと思います。

 

単純な計算で言えば、

1時間でやっていた仕事を30分でこなせば、生産性は倍になります。2倍稼げることになります。

1時間の仕事を、もう1つ追加すれば、売上は倍になります。

 

優秀な起業家はこれを達成することができるでしょう。

起業して様々な経験をすることで、サラリーマン時代にやっていた仕事がよりブラッシュアップされ全てが洗練されていきます。2倍のスピードで仕事できるようになるし、時間を増やして仕事をこなすこともできます。

 

しかし、みやび君は学びました。時間が無限にあるわけではなく、ただ仕事をこなせばいいというわけではない。今できることの延長線上で考えていると自滅する。

 

みやび君の場合は、自滅していることを妻が教えてくれました。妻が我慢をし、みやび君に何も合図を出さない人であれば、このまま家庭崩壊へ一直線。

 

みやび君は何も気が付かないまま一人で突っ走っていったと思います。そういった意味ではみやび君はツイていました。

 

サラリーマンの時であれば、暴走した時には上司が注意してくれます。仮に暴走しすぎてミスを犯したとしても会社として対応できます。このような意味ではサラリーマン時代は会社に守られているのです。逆に言えばチャレンジし放題で、失敗しても大丈夫だと言えます。

 

それが、独立して自分が主として活動し始めた途端、暴走しても誰も止めてはくれません。

 

その時に自分の現在位置を知るための物差しとなるのが数字です。数字はリアルです。だから毎月会計帳簿を作るのです。

 

もちろん、素人が自分で好きなように作ったもので判断するのはプロである税理士でさえ難しいです。ルールがありますから、そのルールにのっとって作ることで税理士が活きてきます。

 

毎月、綺麗に会計記帳が出来ていれば「私の会社は今、どうですか?」とざっくりした質問でも、税理士からある程度の回答が得られます。これを定期的に繰り返すことで、自分の活動を振り返ることが可能となります。

 

例えば、暴走し始めると、これまでと違う数字が出来上がってきます。「売上が増加したけど、その分、交際費が増えた」「人の入れ替わりが激しくて、人件費の増減が激しい」「売上があるのに、入金が滞る先が増えた」など、数字から見える部分に変化が起きます。

 

もちろん、こんなことは、起業家自身がよく分かっているんです。ただ、分かっていても誰も指摘してくれませんから、本気で向き合えるわけではないんです。何か問題があるとは認識していても、解決すべき問題という認識までは思えません。

 

だって、毎日忙しく、毎日新しい問題が発生しますから。

 

そうならないように、定期的に自分の会社の数字を見て、振り返る時間を持つことができるかが重要になります。

 

今までは会社が評価してくれました。それが物差しとなって、やる気が出たり、やる気がなくなったりした。起業家は、自分自身が意図して実行しないと、自分の会社の評価が分からないはずです。

 

あなたはやる気に満ちて起業した。今のあなたの会社はどのような評価なのでしょうか?

 

ぜひ毎月、会計帳簿を作り会社の評価をして下さい。税理士はその目的を果たすために存在しています。
 

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