未来を変えるのに必要な唯一無二の選択 がんばれ!みやび君【第19話】

 

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税理士に相談にのってもらい、自分が必要とされる単価が見えてきた。

 

答えらしきものは見えたが、具体的にはまだ何も始められていない。

 

自分にはその単価の価値があるのか、本当にやれるのか、失敗するんじゃないのか、誰も求めてくれないんじゃないか、色々な不安が頭を駆け巡る。

 

友人の経営者も、上手くはいっているが時々、不安になると言っていた。不安を感じるのは必然なのか、自分が臆病だからなのか分からないが、友人も同じように不安を感じることがあることは、みやび君にとっては救いだった。

 

起業家は何も決められていない未来を自分で切り開く必要がある。

 

誰も教えてはくれないし、責任もとってくれない。だから不安を感じるのは当たり前なのだ。むしろその不安は新しいことが始まる予感とも言える。

 

みやび君は、次に何を決めるのか。続きをみていこう。

 

 

【第19話】みやび君、しない事を決める

 

税理士と契約し、自分の単価を”何となく”設定したみやび君。

改めて自分の出している請求書を見ながら、設定した単価と照らし合わせた。

 

「これは低い、あっ、これもだ…」「これは高いよね!なんだ小太り君の現場か」

 

過去三ヶ月分の請求書をあらためて見てみると、何と半分以上設定した単価を下回っている事実に気づいた。

 

「これじゃあ、忙しいだけでもうからないよね…」

 

薄々感づいていたことだったが、目標の数字と現実の数字を見比べると、動きようのない事実を突き付けられて吐き気がした。

 

「っで、どうするのよ俺。」「…この仕事今後は受けない方がいいのかな?」

 

独り言が続く。

 

こういう追い詰められた時は昔のことを思い出すものだ。必死に営業していた自分。決して簡単に受注できた仕事はない。

 

むしろ単価の高い現場より、安い現場の方が皮肉にも受注するのが大変だった。これは過去を振り返ってみたからこそ分かった驚くべき事実だった。

 

しかし目標の単価は設定できたけど、現実問題として、この単価で受注できる保証などない。私の目標単価など、発注側からすれば関係のないこと。

 

良いものを安く提供してくれれば、それでいい、というのが発注側の素直な感想だと思う。

 

良いものを安くなんて、今の時代当たり前だもんね。良いものを高く、良いものをより高くしたい。でもどうやったらいいのか。

 

昨日までの自分と今日の自分、明日の自分はたいして能力に差はない。明日になれば突然スーパーマンになって、能力が100倍になるなんてあり得ない。

 

明日の自分と今日の自分は同じはず。でも、明日には私の単価をあげなければいけない。そんな夢みたいなことは出来るのだろうか?

 

答えを導き出そうとインターネットで検索はしてみるものの、もちろん自分が欲しい答えなど見つからない。答えは書いてあるのかもしれないが、腑に落ちないんだ。

 

何故かインターネットに書いてあることは自分事のように考えられない。自分とは違う世界の人たちの考え方のように映るんだ。

 

その晩一人で考えたが答えが出なかった。重たい1日だった。

 

翌朝、昨晩考えたことを妻に伝えた。

 

「やめたらいいじゃない!」妻は即答した。私は口が空いたまま表情が固まった。一方で妻の顔は真剣でありながら優しい。

 

「でっ、でも、俺がやっとの思いで受注した仕事だぜ…」私は苦労して受注した仕事を失うのが怖かった。お金が必要で必死に頭を下げて手に入れた私の仕事。そんなに簡単に手放せない。

 

「だって、その仕事を続けてたらあなた新しい仕事出来ないでしょ?値上げしてくれるなら話は別だけど」正論だ。正論が私のあたまを鈍器で殴ってくる。「いや、正直かなりきついと思う。だって前の人より安くするから受注できた仕事もあるから」

 

「じゃあ辞めるしかないわね。だってその人あなたのことを必要としているわけじゃないでしょ?」『グザッ』と鋭利なナイフで胸を突き刺してくる一言だった。

 

でもこれが外から見える真実。薄々自分でも分かっているけど、どうしても受け止めることが出来ない。自分は必要とされている。そう思い込みたかった。そう思われていることが自分の遣り甲斐にもなっていた。

 

「いちおう税理士さんにも聞いてみたら。同じこと言うんじゃないかな?」

 

早速その日のうちに税理士にも連絡してみた。

 

「先生、こんなことって聞いていいかわからないんですけど…」半分、私の愚痴のような相談だったが、何故か税理士が「うん、うん」と嫌がらずに話を聞いてくれる。

 

今朝の妻とのやりとりを一部始終伝え終わると「奥様は相変わらずはっきりしてますね」

 

「はぁ…」大きなため息が出た。

 

「でも、奥さんの言っていることは正解でもあるし、不正解でもありますね」

 

「えっ、正解?不正解?」

 

「今の仕事を継続するのもある意味正解です」

 

「えっ?」混乱する。正しい答えを求めている自分がいるが、何が正解か、何が不正解かなんてないんじゃないのか。もし、正しい答えがあったとしたら、失敗する人なんていないはずだ。いや、でも正しい答えが欲しい。私はどうしたらいいのだ。

 

「では、もしすぐに単価が安い仕事をすぐに辞めたらどうなるか。辞めずにしばらく続けたらどうなるか。一緒に考えてみましょうか」

 

税理士は、妻の言う通りすぐに安い単価の仕事を辞めたらどうなるかを数字を使って説明してくれた。聞いていると、これが正解ではないという気がしてきた。逆に、安い単価の仕事を続けた場合にはどうなるかを数字を使って説明してくれた。これも正解ではない気がする。

 

「先生、どっちもダメじゃないですか」税理士に突っ込みをいれた。税理士は笑っていた。「みやびさん、自分の決断の先に、必ず正解がないといけないと思うと、行動するのが怖くなりますよ。いいんですよ。不正解でも」

 

不正解でも良いという言葉がしっくり自分の中に溶け込んでいく。「みやびさん、正解探しをしているんじゃないんです。自分が下した決断を正解にするか、不正解にするかは、経営者次第なんです。だから、まず決めなければいけません。経営者の大事な仕事の一つは決めることです。決めないと何も分かりません。決めた先に知りたい結果があります」

 

確かに。サラリーマンの時は、正解か不正解かは上司や会社が与えてくれていたけど、そもそもそれが正解かどうか分からないよな。もし、私に部下がいたとしたら、何が正解かなんて教えてあげられるだろうか。経験したことがあれば教えてあげられるが、私は未知の世界にいる。もし、そこに正解があるとしたら、それは自分の力で正解にしなければいけないのでは?と思い始めた。

 

「つまり、みやびさんがどうしたいかってことですよ。みやびさんがしたいことに対して必要な単価は前回お伝えしました。でも、そこからどういう決定を下すかは、これは第三者が口を出せることではないんです。それが社長の仕事です。経営者の仕事です」

 

「そうですよね。ここからは自分で考えます。また、相談乗って下さい!」

 

「もちろんです。みやびさん、頑張って下さい!」

 

後は、自分次第か…答えは分かっている。とても勇気がいる。

でも、家族の為に、そして自分の為に変わる決意をしたのだから。

 

「やめるぞー!!」

 

みやび君は誰に伝えるわけでもなく、自分を奮い立たせる為に、大声を出した。

 

これから、金銭的に少し厳しいかもしれない。それでも自分はやるんだ。

 

明日から営業頑張るぞ!

 

がんばれ!みやび君!

 

 

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起業家や経営者は新しいことをするのが得意です。得意というより、新しいことをすることに苦痛が少ないから起業したとも言えます。

 

起業してから、起こることの全てを自分一人で解決していきますし、決断は全て自分に委ねられます。

 

起業してから数年経つと、サラリーマンで過ごす数十年分くらいの力を身についていることだってあります。

 

簡単なことであれば、何でもできるようになっているし、自分の知らないことであっても解決の糸口を見つけて、乗り切る力も身についています。

 

その一方で失われた能力もあります。

 

それが何かを辞めることです。自分のビジネスですから、自分が出来ないこと、自分で解決できないことはありません。自分の力であれば出来ることしかないのです。自分の能力を遥かに超えるような仕事はやってこないです。

 

だから「やってしまう」のです。表現が違いますね。「やれてしまう」のです。自分の持っている能力のちょっと上のほうを出せば「やれてしまう」のです。

 

そして「辞める」ことは苦手ですから、やることは増える一方。結果的にやることが多すぎて身動きがとれなくなってしまいます。

 

不思議ですが、サラリーマンの時は「何でもなんでも仕事を任せるなよ、こっちは忙しいんだよ!」という気持ちになった人もいると思いますが、独立すると任せられた仕事はダイレクトに自分に返ってくるので、やります。やる選択肢以外にありません。やればやるほど売上が増え、お金も入ってくる。辞める能力、受けない能力でいえばサラリーマンのほうが高いかもしれません。

 

でも、それで良いと思います。仕事がなく食えない時期に、選り好みせずに仕事を受けるのは、大事なことです。

 

さて、1年は365日、1日24時間が自分に与えられた時間。これには限りがあります。無限には働き続けられません。

 

毎日、身動きがとれないくらいに詰まった予定表。新しいことを生み出す時間さえ取れない状況。落ち着いて考えることが出来ないほどの精神的負担。

 

忙しく生きる起業家には避けて通れない状況です。

 

何かを変えようと思ったら新しい何かをすることではなく、辞める何かを決めること、が必要な時期です。新しいことをしたって中途半端にしか出来ないでしょう。中途半端で大ごとを成しえることが出来るはずがありません。

 

何かを辞めて、自分自身に時間を作り、精神的余裕を持たせてあげる必要がある。

 

しかし、みやび君が経験している通り、辞めるには勇気がいります。何かを辞めると、何かを得られなくなります。

 

みやび君は、今受けている仕事を辞めると売上が下がり、現金が不足します。かといって、今の仕事を続けていると、新しい何かが入ってこなくなり変化は望めません。

 

事を難しくさせているのは、今の仕事を辞めたら新しい何かが入ってくるという保証はどこにもないということ。右に進んでもダメ、左に進んでもダメ、今のままいってもダメ、変えてもダメ。何をやってもダメかもしれない。そんな気持ちにすらなります。

 

でも、よく考えて下さい。

 

起業してから、ずっとそうだったじゃないですか?確実な何かなんて存在しましたか?

 

全てが不確実な中進んできて、何とか売上をあげ、自分の生活を成り立たせようとしていませんでしたか?

 

一瞬で全てが変わるような魔法のほうな方法などありましたか?

 

人とは不思議なもので、一度手に入れたものを手放すのが怖く感じるのです。苦労して得た得意先、人間関係、そしてお金。

 

全ては永遠に続かないし、変化していくもの。社長自身、経営者自身がまずはそれを受け入れ、自分を変えていく。

 

自分を変えるための簡単な方法が「捨てる」ことです。しないことを決めるのです。

 

今と同じことを繰り返していては、今と同じ結果しか得られません。2倍、3倍の成長は望めません。

 

自分にしか出来ないこと、自分じゃなくても出来ること、それを見つけ決めて下さい。

 

「自分じゃなくても出来ること」が見つかったら、それを別の誰かにやってもらう方法を探します。

そして、それを任せましょう。次の課題が見えてきます。

 

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■過去記事

【第0話】がんばれ!みやび君

【第1話】みやび君、起業する!

【第2話】みやび君、税理士に相談する

【第3話】みやび君、お金を借りる

【第4話】みやび君、創業計画書を描く

【第5話】みやび君、開業する

【第6話】みやび君、挨拶周り

【第7話】みやび君、初月の売上に驚く

【第8話】みやび君、確定申告が近づく

【第9話】みやび君、無料の情報を集めて確定申告書を作成

【第10話】みやび君、納税資金が足りない

【第11話】みやび君、計画を立てる

【第12話】みやび君、営業する

【第13話】みやび君、家族崩壊の危機①

【第14話】みやび君、家庭崩壊の危機②

【第15話】みやび君、仕事の価値を考える

【第16話】みやび君、時間について考える

【第17話】みやび君、単価を上げる

【第18話】みやび君、単価を上げる②

 

■次回記事

【第20話】みやび君、紹介営業を始める

 


 


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