人を採用してからクレームがはじまる 頑張れ!みやび君【第24話】

 

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人を雇うと決断した、みやび君。

 

悩むことはたくさんあったが、経営者である友人に相談すると、心は決まった。そして、採用したいと思っている人材も自然に脳裏に浮かんできた。

 

決めたら即行動のみやび君だから、翌日には結果を出す。現場で一緒に働いている年下の島田君。人懐っこい彼と一緒に働くことが出来れば、きっとうまくいく。

 

直感がそう言ってきたようで、迷いはなかった。人を雇うと決断さえしてしまえば、方法はいくらでも出てくるもんだ。

 

人を採用したことで、自分の仕事に加え、他人の仕事まで管理しなければいけなくなった。果たして、みやび君は前に進むことが出来るのだろうか。

 

 

【第24話】みやび君、人を採用してからクレームのはじまり

 

新入社員の島田君を採用してから、数カ月が経とうとしている。

 

入社が決まってから、何度か一緒に食事にいき、将来について2人で話をした。いい会社にしたいし、島田君にも良い待遇が受けられるようにしたい。一緒にがんばろう!というような内容だ。私の気持ちは正直に伝えた、つもりだ。

 

島田君は「うんうん」とうなづいて、話をよく聞いてくれていた。「頑張ります!」と言ってくれるし、島田君自身が独立してやっていた経緯からも、最初から一人で仕事が出来ることがわかっている。こんな良い人材を採用できたことを「幸運」と呼ばずになんと呼ぶ。

 

待遇面については、社会保険の手続きはせずに、雇用保険の手続きだけをしたそうだ。最近は事務的なことは妻に任せっきりだ。妻が税理士と連絡をとってくれて、それに沿って物事を決めている。細かいことに構っていられないくらいに忙しい毎日が続いていた。

 

紹介営業がうまくいき、仕事の受注がとまらないのだ。

 

給料は島田君が元々持っていた仕事の分は給料として払い、それ以外のものは仕事に応じて増やすということになった。

 

島田君に待遇のことを伝えても「俺は全然大丈夫です!みやび社長に任せます。まだ独身ですし自由ですから」とこちらの要望は全て受け止めてくれる。いい子を採用した。とても仕事を進めやすいし、採用してよかった。

 

島田君を採用してから、新しい仕事も受けられるようになったし、売上は確実に増える予感がする。島田君の給料分は何とか稼げそうだし、予定通りいけば利益も出るのは間違いない。

 

こうして島田君を採用してから、穏やかな日々が続いた。

 

これまでは一人で仕事をしていたが、今では島田君も仕事を頑張ってくれる。家に帰っても落ち着いて過ごせる。人を採用して、自分の仕事を任せると、少し自分にも余裕が出てくる。良いことがたくさんあった。

 

こんな日が続けばいいのに、と心の底から願った。

 

しかし、安堵していた時間もつかの間。

 

携帯がなった。山崎社長からだ。どうもいつもと様子が違う。

「お疲れさま。頼んだ仕事のことなんだけど、みやび君のところの島田いるだろ?」 

元々、怖い山崎社長が明らかに怒っていることが感じとれる。

 

「はい。島田がどうかしましたか?」 恐る恐る聞く。そこから、山崎社長からのクレームの嵐。

 

・態度が悪い

・仕事が雑で質が悪い

・片付けをしていかない

・報告がないから進捗が見えない

・仕事にミスがあっても人のせいにする

「お前ちゃんと教育してんのか?これが続くようだと、みやび君のところにはもう仕事は出せない」

怒りが収まらない。「すいません」と謝ることしかできなかった。突然のことで、現実を受け止めきれない。電話口では何度も何度も謝った。許してもらえそうな雰囲気もなく、辛い気持ちになった。

 

後日、山崎社長の元へ謝罪へ伺った。山崎社長は落ち着いていながらも、怒りは収まっていない様子で、厳しいことを沢山いわれた。

 

一番ショックだったのは「仕事の質が悪い」。自分一人でやっているときには言われたことがないクレームだった。

 

仕事の質が悪いとはどういうことだ?そんなことあるのか?毎日真剣に現場に向かえばあり得ない。どういうこと?普通に仕事していたら質が悪くなることなんてないだろ。疑問は消えない。

 

島田君にはどう伝えて良いのか分からない。正直に伝えるべきなのか、それとも言葉を濁すべきなのか。答えが出せない。

 

山崎社長の会社からの帰宅時、考えすぎていて赤信号なのに渡ろうしている自分がいた。服を無理やり引っ張られるから「なんだよ」と思って振り返ると、小学生くらいの男の子に呼び止められた。死んでも気が付かないほど悩みが深いのか。

 

自分のことであれば、何とか出来るが、これは他人の問題。どうしていいのか分からない。帰ってから妻にクレームの件を話した。

 

「そうねぇ、そのまま伝えると島田君は傷つくよね」自分も同感だ。布団に入り、正直に伝えるべきか悩む。娘はスヤスヤ幸せそうに眠っている。今の唯一の救いが娘の寝顔だ。心が落ち着く。

 

娘の横で目をつむっていると自然に眠っていて、あっという間に朝になった。朝食を食べながらも悩む時間が続く。

 

「ねぇ、今週の土曜日なんだけど・・・ちょっと聞いているの!」自分でもビックリして咄嗟に謝る。悩んでも答えがでない。考えても答えが出ない。独立してからこんなことが多すぎる。

 

流石に妻も私の顔色を見て、これ以上、何も言わなかった。「無理しないでね」と優しい言葉をかけてくれ、仕事に行く私を見送ってくれた。

 

正直、かなりつらい。これまでも辛いことはあったが、今まで味わったことのない辛さ。どうやって解決したらいいのか分からない。何が問題なのか?どうしてこうなっているのか?本当のことなのか?現実なのか?

 

考えれば考えるほど、嫌になっていく。

 

朝、現場に行く前に島田君と会うため少し話そうと思った。これしか解決策が思いつかなかった。

 

「最近どうだ?」ありきたりな質問しかできない。核心に迫るのが怖い。

 

「良い感じですよ!充実しています!」予想外の返事に「そうか、それは良かった」としか返せなかった。

 

島田君はいつも通り人懐っこい感じで変わった様子もない。山崎社長が厳しすぎるからかもしれない。時間が経てば山崎社長も島田君の良さが分かってくれるに違いない。

 

そう思い込んで、今日も現場へ向かう。

 

がんばれ!みやび君

 

 

それは仕事を任せたのではなく放棄しただけ

 

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人を採用して、人に仕事をお願いする場合、これまでのやり方が全く通用しなくなります。

 

社長は起業時からすべてのことをやってきた。自分一人でやってきた。

 

あいさつの仕方も、文章の書き方も、仕事への取り組み方も進みながら決めてきた。何となく決まってきたものもあるだろうし、これまでのやり方を踏襲したものもあるだろうし、考え抜いて決めたものもある。

 

会社のすべてのルールは社長の頭の中にしかない。社長にとっては当たり前のことすぎることでも、新入社員にとってはそうじゃない。社長の当たり前の感覚が新入社員との感覚とズレすぎているのだ。

 

これは新入社員の問題ではなく、社長の問題。まずは、自分の感覚が「異常」だということを知るべき。

 

「いや、私はそんな大したことないです」と言う社長がいるが、そういう問題ではなく新入社員からみて社長がどう見えているかの話だ。

 

社長は自分の会社は問題だらけで、解決しなければいけないことが山積みだと認識している。一方、新入社員は会社は立派で社長は大きい存在。なんでも知っているし、なんでもできると思っている。会社に問題など存在するのかなんて考えていないし、社長は遠い遠い存在に思える。

 

社員にとって認識している問題は、あの社員が嫌いとか、あの取引先が苦手、といった部類だ。

 

とにかく新入社員に社長の目線を求めてもできるわけがない。だから、社長が新入社員の目線に合わせる必要がある。

 

でも、合わせるといっても、どうしていいのか分からない。何から始めていいのか分からない。それをみやび君の成長とともに見ていくことにする。

 

さて、みやび君は、島田君に仕事を依頼した。島田君が取り組んでいる仕事は、これまで自分が持っていた仕事のほかに、みやび君が受注してきた仕事だ。もともと持っていた仕事はそつなくこなすだろうが、問題は新しい仕事だ。これは「みやび君」が受注したのだ。島田君ではない。

 

依頼する側は「みやび君」に依頼したことになる。決して「島田君」には依頼していない。

 

依頼者⇒みやび君⇒島田君

 

の流れで仕事の委任がされたのだ。

 

「依頼者⇒みやび君」の流れでは、依頼者はみやび君に期待することがあるだろうし、何を期待されているのかはみやび君は把握できている。

 

期待されていることは

・正確性なのか

・スピードなのか

・親切心なのか

 

これを両社間では長年の関係性から阿吽の呼吸で認識できる。あえてお互いに伝え、確認しあわなくても分かる。もしくは、契約段階でその約束を交わすから、両者間で期待値を共有できる。

 

さて、「みやび君⇒島田君」の段階で、これはどうなるのだろうか?

 

みやび君はどのように島田君に仕事をお願いしたのだろうか。

 

「○○の現場にいってきて」「○○さんの指示に従って」「○○の現場と同じような感じで」などと、どういう仕事をすれば良いのかの指示はするだろう。それも曖昧な表現で。

 

とにかく伝えないと仕事が進まないから。これはどの社長も経験する。

 

でも、みやび君が仕事に行く場合は「山崎社長は時間に厳しい、挨拶も丁寧に、大きな声で、関係者にも同様に大きな挨拶を、片付けも率先して行う、ミスがあったらまずは謝る、困っている人がいたら声をかける、些細なことでも気が付いたことは報告する」など、気を付けるはずだ。

 

これらの情報は、社長であるみやび君だから読み取れたものだ。経験値から必要なことを集め、アウトプットすることが自然と身についてしまった。だって、そうしないと、食っていけなかったから。食っていくために無意識に身に着けてきた能力。

 

しかし、島田君にとっては、その能力がなくても食っていける。

 

山崎社長の現場では守らなければいけないルールというものが存在する。これは島田君は理解しているだろうか?ちゃんと伝えただろうか?島田君が腑に落ちるまで説明しただろうか?一度説明しただけで伝わったと思っていないか?

 

みやび君がどのように考えて、実践しようが、島田君が実行できなければ伝わっていないとしか言えない。

 

「この仕事して」という声かけは、簡単に仕事を進める上では必要なものだが、社長の想いをのせて仕事に取り組んでもらおうと思うと、足りない。足りなさすぎる。

 

この仕事をどのようにしたらいいのか、具体的な手順を全て、すべて、、そう!全て伝える必要がある。

 

「あれやっておいて」「これやっておいて」という曖昧な指示は、仕事を依頼したのではなく、仕事を放棄しただけなのだ。

 

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■過去記事

【第0話】がんばれ!みやび君

【第1話】みやび君、起業する!

【第2話】みやび君、税理士に相談する

【第3話】みやび君、お金を借りる

【第4話】みやび君、創業計画書を描く

【第5話】みやび君、開業する

【第6話】みやび君、挨拶周り

【第7話】みやび君、初月の売上に驚く

【第8話】みやび君、確定申告が近づく

【第9話】みやび君、無料の情報を集めて確定申告書を作成

【第10話】みやび君、納税資金が足りない

【第11話】みやび君、計画を立てる

【第12話】みやび君、営業する

【第13話】みやび君、家族崩壊の危機①

【第14話】みやび君、家庭崩壊の危機②

【第15話】みやび君、仕事の価値を考える

【第16話】みやび君、時間について考える

【第17話】みやび君、単価を上げる

【第18話】みやび君、単価を上げる②

【第19話】みやび君、しない事を決める

【第20話】みやび君、紹介営業を始める

【第21話】みやび君、事業好調なのに資金繰りを考える

【第22話】みやび君、従業員を雇うか迷う

【第23話】みやび君、従業員を雇うと決める

 

■次回記事

【第25話】みやび君、辞める従業員に苛立つ

 


 


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