だまされるな!起業して収入が増えたのに生活が苦しくなった本当の理由

 

Q.起業すれば手取りの収入が増えると聞いたのですが、本当ですか?

A.ケースバイケースです。上手くいった場合は増えますが、減る場合も多いです。

 

起業した当初は手取りが大幅UPする!?

 

「月収が24万円だったのが起業したら月収40万円になりました。起業して良かったです!」あるクライアントからこのような話を聞きました。

 

果たしてこれは本当なんでしょうか?

 

答えは「No」です。

 

決して手取り収入は増えていません。

それどころか、この金額が将来ずっと維持される、または、減少するようであったら、正直起業は失敗と言わざるを得ません。

 

 

どういうこと?起業時の手取りは手取りではない!?

 

サラリーマンの手取りは基本的には、本当の意味の手取りですので、ご安心してお使いください。

 

では、起業した人の手取りはサラリーマンの時と同じように使ってもいいのでしょうか?

 

答えは「No」です。

 

では、起業した人の手取りと認識している金額とは何でしょうか?

 

①その月の売上

②その月の売上-経費

③その月の売上ー経費ー借入返済

 

おそらく起業当初の方は①~③のいずれかを手取りと認識する場合が多いです。

 

では、①~③を手取りとして認識している場合、なぜサラリーマンのように安心してお金を使ってはいけないのでしょうか?

 

答えは「税金」が引かれていないからです。それ以外にも「健康保険料」や「国民年金」の支払いもあります。

 

ここについては次の項目で詳しく見てみましょう。

 

 

税金って本当に怖い!?

 

比較の為にサラリーマンの場合から見てみましょう。

 

サラリーマン時代の給与明細がある方は見てみて下さい。

 

 

サラリーマンの場合は、基本的に税金は「前払い」となります。(一部例外を除く。)

 

また、その年に支払うべき「税金」を月割にして給与から天引きしてくれています。社会保険に関しても給与から天引きされており、自分自身の口座から支払う必要はありません。

 

よって、サラリーマンの場合は、給与として振り込まれてくる金額を自由に使ってもOKです。

 

では、起業した後はどうなるのでしょうか?

 

取引先から売上が入金されたとき、税金は引かれていますか?

 

一部の業種の方は引かれている場合がありますが、基本的には引かれてありません。

 

では、いつ払うのでしょうか?

 

これは税金の種類によって違いますが、基本的にその収入のあった翌年に払うことになります。

 

つまり、起業した人は税金を「後払い」することになります。

 

個人的な話ですが小さい頃プロ野球選手の契約更改といって年俸をテレビで発表するのを見るのが好きでした。(小さい頃からお金が好きだったんですね(笑))

 

そこで、ある有名な野球選手が泣きながら税金が払えないと会見している映像を覚えております。その選手は前年の年収から大幅にダウンする金額を提示されたとのことでした。

 

小さい頃は全然意味がわかりませんでしたが、今ならなるほどこの人はもらったお金をほとんど使ってしまったことが分かります。

 

そうなんです。起業した人(プロ野球選手も同じです。)は、考えてお金を使わないと、税金が払えなくなってしまうんです。

 

同じく、社会保険はいつ払うのでしょうか?

 

「国民健康保険」とか「国民年金」なら起業してから毎月払っているよ、と言われるかもしれません。

 

確かにその通りなのですが、問題は今払っている「国民健康保険」がいつの収入と対応しているかということです。(注)国民年金は収入に関係なく定額です。

 

開業した当初は、いろいろな理由から「国民健康保険」はあまり高くないケースが多いです。

 

だだし、儲かった年の翌年、想像以上に高額な「国民健康保険」の請求があります。

 

これも、税金と一緒で「後払い」に近い性質があります。

 

つまり、起業した後は「税金」や「社会保険」は後払いになるということですね。

 

だから、上の①~③を手取りと認識している方は要注意になります。

 

正確には

④その月の売上-経費-借入返済-将来払う税金-健康保険料・国民年金

 

が手取りと認識した方が良いということですね。正確にはもう少し手を加えた方がよいのですが、一旦はこれくらいで十分です。

 

 

将来払う税金って自分で計算できるの?

 

新規で顧問契約を希望される方から

 

「通帳の預金は増えていくが、どれだけ使っていいかわからない」

 

といった悩みを伺うことが多いです。多くの起業家の共通の悩みです。

 

最近では、開業される方がネットやYouTubeから情報を取得しているようなので、やたら詳しい人もいます。

 

おそらく、上記の質問をされる方は、何らかの媒体から「手取りをすべて使ってはいけない」という情報を得たのでしょう。

 

情報はかなり簡単に手に入るようになりましたが、それを自分の状況に落とし込めるかはまた別の能力が必要です。マズいケースでは、「自分に当てはまらない状況」を「自分にあてはめて」すすめてしまうことです。

 

人間は情報を自分の都合の良いように解釈する傾向にあります。逆に言えば、都合の悪い情報は取り入れない。面白いものです。これだけ情報が溢れていても、それが自分自身とどのように関わってくるのかを判断できる人は殆どいないのです。

 

私見で申し訳ありませんが例えばYouTubeでの情報については、「こういう考え方もあるよ」とか「○○な場合は当てはまるよ」といったふうに限定的に解釈するのが丁度よいと感じております。

 

YouTubeで情報を発信されている方の否定をするつもりは一切ありませんが、専門家以外が聞くと誤解するような内容が一切ないわけではありません。

 

つまり、その情報が自分に当てはまるかどうかのジャッジを自己責任でしなければいけないということです。

 

話がずれましたが、将来払う税金を自分で計算することは可能です。

 

ただし下記の条件が必要です。

・その年の最初から現在までの会計帳簿を作成(または概算でも儲けの金額を出している)すること

・その金額を法律に沿って税金計算すること

 

税金や社会保険の計算は正直かなり複雑なので、正確に税額を計算しようと思ったら、専門家に頼むことをおすすめします。

 

ただし、だいたい今年の儲けは○○○万円くらいと見込めるのであったら、ネットを検索すれば、概算で税金を算出することは可能かと思います。

 

概算でも十分ですので、重要なことは「後払い」の税金を意識してしっかり残しておくということですね。

 

 

これから独立を考えている方へ

 

すでに独立されている方は、後は頑張るだけです!

 

ただし、現在の手取りで安心せず、さらに収入を増やすことを目指してください!また、後払いの税金には十分にお気をつけ下さい!

 

これから独立される方についてはここまで書いてきたように開業当初の売上げに騙されないようにして下さい。

 

例えば独立したら今より月収が10万円増えるよ、と聞いていたとしても、本当に自分の収入が増えるか再度お考え下さい。

 

起業時に相談に来られる方のヒアリングをして、自分の欲しい生活費から逆算した売上を算出すると「え?こんなに売上がいるんですか!?」と驚かれる方もいます。

 

いわゆる最低限の売上になるわけですが、起業前にこの数字を意識するだけでも、起業後の行動が変わってきます。

 

また、独立した場合には他にもデメリットがあります。

 

例えば、月収や年収が増えていたとしても将来貰える年金が大幅に減ることが想定されます。その分は現在の収入を貯蓄に回すなどの工夫が必要です。

 

また、サラリーマンであればよっぽどの状況にならない限り、クビにされることはありません。法律が守ってくれます。

 

しかし、独立した後は、相手がいくら大企業であったとしても相手も自分も事業者です。得意先もあなたを選ぶことが出来ます。契約の解除だってありえます。自分に問題がなかったとしても得意先が倒産して仕事がなくなることも予想されます。

 

つまり自分の売上げが継続するかどうかはご自身にかかっています。びっくりする程シビアです。

 

つまり、独立後収入が増えたとしても非常に厳しい環境に身を置くことになります。

 

独立した後のビジョンを明確にし、しっかり計画を建てたうえで実行することをおすすめします。

 

補足:インボイス制度の兼ね合いで独立しにくい状況とはなりましたが、その点については別の記事にて解説させて頂きます。

 

 

欲しい手取りを実現するための売上は一体いくらになるのか?

 

では、欲しい手取りはどのように計算したらいいのか、考えてみましょう。

 

手順を書きますので、ぜひやってみてください。一人でできなくなった時には、税理士に相談してください。

 

1.生活費を把握する

 

ざっくりとでいいので、サラリーマン時代の生活費を集計してください。給料が振り込まれる通帳から出金される金額を集計すれば分かると思います。出来る人は、住居費、食費、娯楽費など項目別に集計してください。

 

2. 売上-経費-借入返済-将来払う税金-健康保険料・国民年金を計算してみよう。

 

細かいことは置いておいて、この項目を順番に埋めてみましょう。

 

3.国民年金

 

ググってください。すぐに月の支払金額が見つかると思います。

 

4.健康保険料

 

自分の住んでいる市区町村のホームページに計算式がのっています。その計算式に従って計算すれば、金額が算出できます。専門用語がたくさんありますが、一つ一つ調べていって下さい。

 

5.税金

 

個人事業で起業する場合は、所得税、住民税、事業税の3つを計算してください。それぞれ専門用語が沢山でてきますが、一つ一つ調べていってください。消費税を払うような事業規模であれば税理士に頼みましょう。

 

6.借入返済

 

いくらお金を借りて、ビジネスを始めるのかが決まっていないと算出できませんが、多くの方は200~1,000万円くらいが多いかと思います。店舗を出したりしない人は300~500万円、店舗出店や在庫をたくさん抱える人は500~1,000万円借りると思って計算してください。

 

いくら借りたら、毎月いくら返済すればいいのか?は調べれば、計算してくれるサイトが見つかると思います。

 

返済年数は運転資金なら5~7年、設備資金なら7~15年程度で計算してください。利率は1~3%で適当に計算してください。

 

7.経費

 

あなたのビジネスで必要となる経費を考えて下さい。既に起業している人は、リアルな数字が分かるかと思います。逆に何にいくらかかるかよく分からない人は、ビジネスプランの構築が甘いので、やり直しです。

 

よく考えて下さい。

 

何にいくらかかるのか不明確なままで事業を始めることは可能ですが、それで上手くいく人は最初から難なく売上を上げられるような人です。

 

そうでない人は、始まってからでは手遅れになるかもしれません。

 

8.売上

 

1~7が分かれば、必要な売上が見えてきますね。計算式はとても簡単です。

 

 

欲しい手取りを実現するために必要な売上高

 

この計算をすることによって、自分が求める売上高が見えてきます。ざっくりとで構いません。あくまで目安ですので細かいことに拘る必要はありません。

 

計算された方はどうですか?自分が想像するより求められる売上が大きかった人もいるでしょう。

 

それを実現させることが出来ますか。逆にそれが実現できないと起業する理由がなくなりますね。食っていけませんから。

 

そのくらいの売上は楽勝!と思われた方もいるでしょう。勇気をだして起業しましょう。

 

そもそも計算なんて出来ない!?の人はどうしましょうか?

 

そのような人のために税理士が存在しています。

 

私たちの事務所には起業前に相談に来られる方がいます。思い描くイメージはあるが、それが実際に実現可能なのか。そもそも、実現したとしてやっていけるのか、食っていけるのかが心配になります。

 

ぼんやりとしたイメージを鮮明にイメージできるようにお手伝いします。

 

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