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初めて採用した島田君が辞めて、しばらく経ち、仕事も落ち着いてきた。
一人で仕事をするのは、とても快適だ。
自分が獲得した仕事に精一杯取り組んでさえいれば、自分を攻撃してくるやつはいない。みやび君が社長であり、自分ですべてを決められる。誰からも指示されることもない。
その最高に素晴らしい環境を捨ててまで、人を採用する意味を見いだせない。
しかし、なぜ人を採用したかというと、仕事が一人では抱えきれないくらいに獲得できた。そして、自分を頼りにしてくれる人たちの期待に応えたい。そう思っていた。
今のぬるい環境を守るのが大事なのか、人のために何かしたいという貢献欲が大事なのか。
みやび君はどのような決断をしていくか、みていきましょう。
売上も増えて、利益も増えているはずなのに現金が増えている感覚がない。その仕組みを知るために税理士に相談した。
税理士からの回答はいつものように明確だった。
・それほど増えないのでいい
・生活費に比べて利益が少ない
・節税も検討しつつ生活費も一度見直すといい
・このまま働き続けることが出来れば、徐々に増えていく
現金を増加させる難しさを知った気がした。
個人事業主だから、自分が得た利益の中から生活費を払うことになるが、生活費は経費にならない。
だから、【"利益-税金"="生活費+貯蓄"】の計算式が成り立つらしい。
貯蓄を増やそうと思えば3つの方法がある。
1.利益を増やす
2.税金を減らす
3.生活費を減らす
目からうろこだった。税金を減らすことばかりに目がいきがちだが、自分でコントロールしやすいのは税金ではなく、利益と生活費のはずだ。
ピンとくるものがあった。
税金を減らす方法は税理士に任せるとして、利益を増やす方法と生活費を減らす方法を考えなければいけない。
利益を増やす…?
利益を増やすにはもっと売上が必要…?
もっと働けってこと・・・?
ん・・・?
もっと働いた結果、どうなった? また妻が家から出ていくぞ(笑)
頭をフル回転させた結果、出た結論に笑えた。「おーーーい!ダメだよーーー!」車の中で大きな声で叫ぶ。
正直に妻に相談しよう!
その日の晩、ご飯を食べながら、税理士から言われたことを伝えた。そしたらだ!妻から意外な返事が返ってきた。
いいわよ!やってみなさいよ!私たちも少し我慢する。最近のあなたは変わってきたし、前とは違う。
あっさり妻から許可が出て、私はガムシャラに働くという意思決定を許された。
有難いことに仕事の依頼は途切れることはなかった。今まで断っていた仕事もやってみようと受けていった。自分では受けきれないものは外注にだした。丸投げして少しの利益を頂く。
とにかく、働け!働け!働け!
元来、働くことに抵抗のない私は、働き続けた。妻も娘も私の姿を温かく見守ってくれるため、より一層仕事に精を出すことができた。有難い環境が私のやる気を後押しする。
売上は上がり、明らかに手元に残るお金が増える感覚があった。
これはイケる!?仕事を受注し続けて、自分が受けられない仕事は外注に出す。そうすればいい。
外注先は逃げ出す人もいないし、ある程度仕事をやってくれる。出来ない人がいれば、外注先を変えればいい。島田君みたいに気を遣う必要もなく、ドライな関係でいられる。忙しい私にとっては好都合な関係だ。
それから数カ月間、この生活をつづけた。
預金口座の残高の増え方がかわってきた。めちゃくちゃうれしかった。ようやく自分の働き方を見つけた気がした。
島田君を採用して、それは失敗だったけど、その失敗を活かして、自分に合った働き方を見つけた。起業するって、色々あるけど、面白いなぁと感じていた。
ガムシャラに働き、夜遅くに帰ることもあったが、妻と娘は笑顔で出迎えてくれ、このままいけば貯蓄も増えそうな気がする。何の問題もなく、毎日が進んでいく。
そんなある日、税理士からチャットが届く。「事業は好調のようですね!お身体のほうは大丈夫ですか?」
「ありがとうございます!すこぶる快調です!」即レスする。精神的にも安定しているし、仕事に集中できている。
税理士といくつかやり取りした。何やら、数字を見る限りは好調そうに見えるが、急激な変化に体はついていけているか?みたいなことを心配されたが、余計なお世話だ。順調そのもの。
久しぶりに早く帰れる日があり、家族で晩御飯を食べていると妻が「来月の土曜日の午前中なんだけど、娘の保育園の親子参観があるの。パパの出番もあるようで、出れる?」と。「もちろん!」と即答した。
その後、スケジュールを確認してみると仕事が入っていることがわかった。
「本当ごめん」 ただただ、謝ることしかできなかった。妻は残念そうな顔をしていたが、それ以上何も言わなかった。娘もさみしそうな顔をしているが何も言わない。それが余計に胸を締め付けてきた。
その土曜日が近づくにつれて、私の体調に変化が現れてきた。
その日は朝起きると、体が重たい。どうしても仕事に行きたくない。行きたくないが、行かなければいけない。
行きたくないという強い感情と、行かなければいけないという責任感が布団の中で戦っていた。勝つのは、行かなければいけない責任感。私しかできない。私がいかなければいけない。島田君みたいに逃げるわけにはいかない。
重い身体を無理やり起こし、仕事に向かった。
がんばれ!みやび君
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など
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独立した当初は一人で始める人もいれば、共同経営で始める場合もある。
だけど、初めて起業する人の多くは一人で始めることと思う。
また、最初から仲間を募って、複数人でスタートすることもある。また、家族に手伝ってもらう人もいるとは思うが、やはり一人でスタートする場合が圧倒的に多い。
起業し、マーケティングやセールスが上手くいき、仕事が増えてくる。そうすると、みやび君のように人を採用することが頭をよぎる。何度も言うが、人を採用することが正解なわけでも不正解なわけでもない。
初めて他人を採用して気づくことがある。人は自分の思うようには動かない。書店には「人を動かす」ための書籍が多数ある。それほど多くの人が悩むテーマでもあることがわかる。
だから、初めて人を採用したみやび君が苦労するのは、むしろ当たり前のことだった。
従業員に経営者のように考えて欲しいとか、経営者のようにふるまって欲しい、と考える人もいるようだが、そんなことは無理な話。従業員には従業員の立場と言うものがある。
経営者は知らず知らずのうちに多くの経験をする。否が応でも、それらを乗り越えていく。乗り越えなければ、ビジネスを続けていくことが出来ないから、仕方なく越えていったともいえる。
その人と従業員が同じ目線に立てると思うなんて馬鹿げている。目線を合わせるのは経営者のほう。従業員に目線をあわせ、彼ら彼女らが働きやすい環境を作る。働きやすい仕組みを作る。これが経営者の仕事。
他人の会社に就職して、他人の会社の利益のために働く。その対価として、給料を手にする。
その人に経営者のように働くことを期待するほうが、頭がイカれている。
さて、みやび君は採用した従業員の育成に失敗(?)し、一人に戻った。居心地のいい一人の世界を満喫しているわけだが、満喫し続けられるわけがない。簡単なことなのだが、全てを一人でやらなければいけない。
・風邪をひいても
・インフルエンザになっても
・コロナに感染しても
・体調がすこぶる悪くても
・嫌な顧客を相手にしても
・お金がなくても
働き続けなければいけない。それが一人でやるということ。自分の代わりなんていない。
若くて身体も元気なときは、がんばれる。気合も根性もあるし、徹夜したって大丈夫。少し休めば体力は回復する。
しかし、時間を重ねるごとに体力は衰えていく。若い時と同じような気力も体力もない。それでも一人で働き続けなければいけない。
その間に、自分より気合が入っていてやる気もあって頭も良くて、フットワークが軽く優秀な若者が市場に流れ込んでいく。
そして、同じ仕事を繰り返してきた結果、先細りしていく。同じことを繰り返しても、同じ結果が得られるだけ。なんと、怖い未来だ。
サラリーマンであれば、現場で実務を担う立場から、部下を統括する立場になったり、その人の特色や能力にあわせて、ポジションが変わるが、一人でやる起業家にはそれがない。
自分でその環境を作らなければいけない。なんと、大変なことなんだ。
いつまでも自分が現場の最前線で働いていると、いつまでも最前線で働き続けなければいけない。自分が倒れれば、たちまち無収入になる。実績を積み上げるのはコツコツ時間がかかるが、転げ落ちるのはあっという間。
みやび君は、一人であることに居心地の良さを感じているが、未来永劫、続くわけではない。相変わらず、仕事は自分で獲得し続けなければいけないし、獲得した仕事は自分でやり続けなければいけない。面倒な雑務も自分でやり続けなければいけない。
そして、一人で稼げる限界を感じながらも、その状態を維持することに努めるだろう。それも長くは続かない。
ここで、道は4つにわかれる
1.起業をやめるか
2.このまま進み潰れるか
3.人を採用し仕事を委任するか
4.価値や単価をあげ、稼ぎまくって早めに引退するか
どちらを選択しても困難が待ち受けているわけだが、決断しなければいけない。崖に向かってゆっくりブレーキをかけながら進んでいる状態は避けなければいけない。
経営者の重要な仕事の一つが「決める」ことだが、これは困難を極め、腹をくくらなければいけない。決断を遅らせれば遅らせるほど、崖にむかって進んでいる。いつか崖から落ちるのを待つことになる。
■過去記事
【第26話】みやび君、独りに戻って自由になったのか地獄に戻ったのか
■次回記事