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一人の仕事を満喫するみやび君。
しかし、現実はもっと稼ぐ必要があることを理解した。同じ間違いを起こさないよう、家族と相談のうえ、ガムシャラに働くことにした。
能力が高いみやび君は、そつなく仕事をこなしていく。バンバン仕事を請け、仕事を終わらせていく。できる人というのは、どこまででもやれるもの。フルに時間を使い、仕事をこなす。
ただ、これまでと違ったのは、体調が良い日がずっと続かなかった。体に無理がきているのか、それとも、気持ちの問題なのか。
誰にでも訪れるモチベーションの変化。燃え尽き症候群などと言ったりもする。モチベーションを適切に管理し、維持し続けられるのも経営者の大事な仕事。
さて、体調がすぐれないみやび君は、どうするのか。
朝起きて、仕事に行く。この当たり前のことが苦痛に感じるようになった。やる気に満ちていた自分が偽物だったんじゃないかと疑う。別の人間だったんじゃないか。
これまで、仕事を頑張ってきて、成果もあげてきた。あれだけ楽しかった仕事が、そう思えなくなっていた。
鏡に映る自分は暗い。自分でも顔に覇気がないことがわかる。
妻には「大丈夫?今日は休めないの?」と何度も声をかけられるが、働くこと以外に選択肢が見つからない。
「大丈夫だよ。ありがとう。」と心配をかけないように気丈にふるまった。
不思議なことに仕事現場に行くと元気がでた。仕事が始まると、スイッチがONになるようだ。世間ではやる気スイッチと言ったりするそうだ。だから元気がないのは気のせいなのかもしれない。ちょっと疲れているだけだ。そう思うようにしていた。
そのうち、気分は戻るだろう、と軽く考えていた。
しかし、起業した時のようなモチベーションに戻らないと気が付き始めるのに時間はかからなかった。
家族と過ごせる時間は楽しいとも思えたし、仕事をしている時も、充実していた。
何不自由のない生活を過ごしているのにも関わらず、気分はすぐれない。どうしてなのか分からない。
未来のこと、これからのことを考えると、憂鬱になるのだ。
税理士に相談して、客観的な自分の立ち位置は理解できているし、友人の経営者に相談して、いろんな未来があることも知っているし、小太り君に相談して、自分自身が頼りにされていることもわかる。
でも、不思議とそれだけじゃ元気がでないのだ。
モヤモヤした日々が続いた。
そんなある日、借入先の銀行の担当者から連絡があり、会って話したいと言われた。もちろん断る理由もないため、会うことにした。試算表の準備をお願いされたため、税理士にお願いして、用意してもらった。
銀行の担当者の方は自分より若く20代前半。やる気に満ちていて、フレッシュな様子が胸を痛めつける。事業の近況を聞かれ、色々話した。
事業は上手くいっていると思うが、最近、やる気がでないことや、税金を払うとお金が残らないことなど。
担当者は、よく話を聞いてくれ、私も調子にのって洗いざらい話した。すると、担当者は「一つご提案があるのですが」と前置きしたうえで、話はじめた。
「証券の購入を検討されませんか?投資信託という言葉は聞いたことありますか?」
聞いたことはあるが、投資なんて自分とは違う世界のものだと思っていた。
「毎月、一定金額を購入することで、プロが代わりに運用してくれて、みやび社長は、分配を受け取る仕組みです。お金に働いてもらうイメージです。」
これ以上、働くと体ももたないし、家族に迷惑をかける。事業がうまくいっているのでれば、余剰資金を使って投資をするといい、という提案だった。
なるほど!?と思った。
聞いたことがある。お金に働かせる。そうすることで、自由な時間がうまれる、と。
今の自分にはピッタリの案件かもしれない!と思って、前向きに検討する!?と言って、その場は終わった。
モチベーションが急激にあがるのを感じた。ワクワクといえばいいのか。いろんなイメージがわいてくる。何もしなくても、お金がうまれるって最高だ。リスクはあるとは言っていたが、それでも何もしなくてもいいのは魅力的だ。
もう、こんなに働かなくてもいい。楽になれるかもしれない。大きな期待が胸の中を駆け巡る。
その晩、妻に相談。妻もよくわかってなく、税理士に相談することにした。税理士は便利な存在だと改めて思う。
税理士からの返答は明確だった。
■余剰資金で運用するのは良いと思う
■だけど、今のみやびさんの状況からすると、投資信託を購入して楽になるとは思えない
■みやびさんの場合は、稼いでいる金額、たまった資金からすると、事業に投資したほうが一番利回りがいい
・・・
とかなんとか、細かいことを言っていたが、税理士の話を理解しようとしていない自分がいた。
でも、完全に反対ではないようなので、やってみることにした。もちろん自己責任だということはわかっている。
銀行に電話して、担当者に投資信託を購入する旨を伝えた。
銀行の担当者は、めちゃくちゃ喜んでくれた。彼の成績になるのだと思うが、自分としても良い話をもってきてくれたのだから、私も喜んでいる。Win-Winだ。
投資信託を購入することにした。
世界株式に連動し、分散投資をしている商品だそうだ。株価変動リスクや、為替変動リスクなどはあるが、過去は概ね安定して運用されているものだ。銀行手数料や信託報酬などの説明をうけたが、1%や2%などの小さい割合だったので、気にもしなかった。
細かい説明を聞いていても上の空で、働かなくてもお金がうまれるというイメージが大きく、ワクワクがとまらない。
それから、急に体が軽くなったように感じた。最高の気分だ。すべての問題が解決しそうだ。妻にも購入した旨を伝えた。毎月引き落としがかかることも伝えた。妻は何も言わなかった。
その日は、経営者である友人と食事に行く約束をしていたため、これまでのことを含めて色々相談しようと思っていた。
「今日さ、投資信託を購入してさ。お前もやってる?」 ニコニコ顔の私が聞く。
「積立NISAってやつはやっているけど、長期的な資産運用目的で考えているよ。みやび君は、どうして投資信託なんて購入したの?」 怪訝そうな顔で聞いてくる。
そこから正直に話していった。売上があがってきて、人を雇った。でも上手くいかなかった。一人だと、稼げるには稼げるけど、たいして貯蓄もたまらないし、限界がある。他に方法がないか探していたら、銀行員に勧められて…と一部始終を説明した。
「え?お前マジで言ってんの?」 友人の顔が一気に険しくなる。
投資信託は反対しないけど、お前のビジネスのステージは今そこじゃないだろ?そこで止まるの?やめるの?稼げないまま終わるの?え?なんで独立したの?
多くの質問が一気に飛んできた。腹の立つ質問もあったが図星だから言い返せない。
「たいして金貯まってないでしょ?その金で運用して楽になると思うの?お前が爺さんになるころは知らんが、少なくとも来年、再来年は苦しいままだぞ」
正論が飛んできた。でも、投資してお金に働かせるのは間違っていないはず。私は食い下がった。
「それは間違っていないけど、順番や時期の問題。やり始めることも反対はしないし、投資信託自体を否定しているわけじゃない。お前が自分のビジネスと向き合うことを避けていることが問題だって言ってんの」
私は何も言い返せなかった。
がんばれ!みやび君
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当たり前のことだけど、ビジネスが好調であり続けることはなく、好不調を繰り返す。同じように経営者である自分の体調の変化もある。
良い時もあれば、悪い時もある。
モチベーションが高い時もあれば、低い時もある。
独立して、自分の生活費を稼ぎ、うまくいくことや、うまくいかないことを順番に経験したあと、モチベーションの低下が始まる。
ずっと高いモチベーションを保ち続けられる人もいるが、そのような人は最初から基準が高い。基準が高いから、その基準に到達するまでが長い。だからモチベーションを保ち続けられる。
だけど、みんながみんなそうじゃない。
自分の持っていた基準に到達すると、そこに安住したくなる。コンフォートゾーンなどと言うようだ。みやび君は、自分の求める基準まで到達してしまい、自分が何をしたいのかが分からなくなっている。だって最低限、手に入れたいものは入れてしまったからだ。
今と同じように働いていれば家族との時間も持てるし、食うに困らない。大した贅沢は出来ないし、お金もたまらないけど、現状には満足できる。
ある意味、求めていた環境が手に入ったのだから、話はお終い、になればいいのだが、現実はそうはいかない。何かが足りないことは、薄々感じる。一度、感じてしまうと、違和感から抜け出すことはできない。解決しない限り、一生つきまとってくる。
また、起業家は誰かからモチベーションを上げてもらうわけにはいかず、自分自身で上げるしかない。どこまでやるかの基準も自分が決める。アドバイスをくれる人たちは沢山いると思うが、決めてくれる人など存在しない。決めるのはいつも自分だ。
さて、典型的なこの起業家のみやび君は、どのような対処をとる必要があるのだろうか。
あえて答えを出すとすれば、自分の仕事の意味を見出す、ことが必要。
言い方を変えれば、自分だけを満たす世界から、他人を満たす、社会を満たす、世界を満たす、という一見恥ずかしく聞こえるような世界に飛び込む必要がある。
人によっては、家族を満たす、ことが答えになる場合だってある。少なくとも自分だけを満たす世界から飛び出ることが重要になってくる。
しかし、みやび君は、自分を満たすことだけしか見えていない。だから、問題解決の方法が自分を満たす投資信託になってしまった。投資信託を購入することが悪いわけではなく、違和感を解消するための解決法にはならないということを友人も言いたかったに違いない。
これは私の持論だが、幸せは人が運んできてくれると思っている。人との深いつながりから、深い幸せを感じる。その人というのは、夫かもしれないし、妻かもしれないし、親かもしれないし、子かもしれない。上司かもしれないし、部下かもしれないし、顧客かもしれない。その対象は、人それぞれだが、必ず「人」が介在する。
お金を払ってくれるのは「人」だし、感謝を伝えてくれるのも「人」。
自分を満たすことしか考えられない人たちに、深い幸せは感じられない。
自分も満たし、他人も満たす。そうすることで、カネや感謝は「人」から「人」へ移動できる。与える人がいて、受け取る人がいる。その両者がいて、成り立つ公式です。
だから、自分の行っているビジネスに対して、未来がみえなくなってきたり、閉塞感を感じたら、まずは「自分のことばかり」考えていないか自分を見つめるのがいいのです。
お金が足りないと感じているのなら、他人を満たす行為が少なすぎるし、満足感が不足しているなら、他人が満足できる行為が少なすぎる。
これは、とてもシンプルな考え方なのです。
■過去記事
【第26話】みやび君、独りに戻って自由になったのか地獄に戻ったのか
■次回記事