価格の嵐が来る!値上げしないとヤバい?

Q.値上げを検討しています。どれぐらいの金額値上げしたらいいですか?

A.値上げは何度も出来るものではありません。中長期の経営計画を加味して値上げを検討して下さい。

 

2023年、今年も値上げラッシュ。御社は大丈夫ですか?

 

2023年2月1日、本記事を執筆しております。

 

本日も、紙面では「今日から○○品目が値上げ」なんて記事が出ておりました。この半年、このよな記事ばかりで、もう驚くことはありません。

 

新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ進行に伴う未曾有の金融危機、円安、資材不足…

 

このような世界情勢のなか、家計もそうですが、当然あなたのビジネスにも大きな影響が出ているはずです。

 

電気代をはじめとした固定費の増加、資材不足による材料代の高騰により深刻な被害を被った事業者も少なくないはずです。

 

今までの日本は「失われた20年」(「失われた30年」と言われる場合もあります。)という言葉に象徴されるように、日本経済の成長は低迷しておりました。

 

つまり、その結果物価はほぼ変動せずに、幸か不幸か、事業者にとっては自社の商品の価値について考えなくても良い時代が続いたわけです。

 

それが、上記のように昨年、とうとう状況が一変しました。

 

抵抗しようもない値上げに、自社の業績が一変したという状況を目の当たりにするということは少なくありません。

 

自分で動ける、考えられる経営者は既に客先に対して値上げ交渉を行っていることでしょう。

 

ここでは、自分で考えることが難しい方に向けて、少ない経験ではございますが、数値の側面を中心に値上げの考え方について、税理士ならではの見解を述べさせて頂きます。

 

 

どれだけ値上げしたらいいの?

 

当然の話ですが、値上げなんてそう何度も出来るものではありません。

 

値上げの話をされて、嬉しい人なんてこの世にごく少数でしょう。

 

値上げの交渉をされる相手も、仕方なしに渋々値上げをのんでくれる(のめない場合は取引が終了する)ことでしょう。

 

自分にも相手にも大変なストレスがかかることを、そう何度も行うことは当然出来ませんよね。

 

ですので、その数少ないチャンスでどれだけの金額を提示するか。

 

ここについて悩んでいる経営者は少なくないはずです。

 

もちろん、ここで解説する内容は一意見であって、絶対的な回答ではない事はご了承下さい。

 

①最低限これだけは

値上げを検討するに当たり最低限検討したいのが、仕入れる材料代等の値上げ分をアップすることです。

 

すごく簡単な例ですが、100円の材料を自社で加工して400円で販売するとします。この材料代が100円から倍の200円となった場合は、当然ですが利益(粗利益といいます)は

 

【400円-100円=300円】

から

【400円-200円=200円】

に減少します。

 

これでは、さすがに厳しいので材料代の値上げ分100円を売上価格にのせて500円にするといった具合です。

 

ここでは簡単に材料代と言いましたが、もうちょっと専門的な言葉では【変動費】といいます。

 

【変動費】とは、生産量や販売量に比例して増える経費のことをいいます。

 

例えば、商品を1個作るのには10円かかる経費で、商品を10個作るのには100円かかる経費のことになります。

 

ですので、会社によって異なりますが、材料費のほかに消耗品費であったり外注費がこの【変動費】に該当します。

 

材料費以外にもこの【変動費】に該当するものの値上げ分も、売上の値上げに加味することが必要になります。

 

なお、余談ですが、売上からこの【変動費】を引いたものを限界利益といいます。

 

この限界利益が変動費以外の経費である【固定費】と一致する金額を損益分岐点(売上高)といいます。

 

例えば商品1個400円で販売する会社が、その商品1個当たりの【変動費】が200円で、【固定費】が月50万円の会社があるとします。

 

この会社は何個商品を売れば利益がでますか?

 

答えは2,500個以上です。ちなみに月の損益分岐点売上高は100万円です。

 

言い換えると、この会社は商品を2,500個売って売上が100万円にいかなかったら赤字ってことです。

 

じゃあ今回の値上げで、1個あたりの商品を作るのにかかる【変動費】が200円から300円になったらどうなると思いますか?

 

この会社は何個の商品を売れば、いくらの売上をあげたら黒字になると思いますか?

 

答えは倍の5,000個です。月の損益分岐点売上高は200万円です。

 

たった100円材料費の金額が上がるだけで、この会社の売上げ目標(ノルマ)は跳ね上がるってことなんですね。

 

ここで、なぜわざわざ【変動費】なんていう専門的な言葉を使ったかというと、実は数字の嫌いな経営者だったとしても、自然とこの【変動費】を用いた損益分岐点(売上高)の計算を行っているからです。

 

「うちの会社は、毎月5,000個商品を売らなければ赤字になる」

「月の売上げはだいたい200万円は最低ないときついな」

 

っていう感じで、この損益分岐点(売上高)を感覚的につかんでいる経営者は少なくありません。

 

先にも述べましたが、この20年から30年に関してはこの経営者の計算が大きく狂うことはありませんでした。

 

ですが直近の大幅値上げにより、経営者の「〇個売れば大丈夫」って感覚は大きく狂うことになるでしょう。

 

細かいことを考えるのが面倒くさいあなた。

 

まず、自社のこの【変動費】を確認してみて下さい。

 

ここにどれだけの値上げがあったか分かったら、その分は最低値上げにチャレンジしてみて下さい。

 

この値上げが出来なかったら、最低限黒字になる為のハードルは上がり続けるでしょう。

 

働いても働いても儲からない、そんなの地獄ですよね。

 

②出来ればここまでは

もちろん値上げがあったのは材料代などの【変動費】だけではありません。

【固定費】だって当然値上がりしています。

 

一般的に【固定費】に分類される、人件費や電気代なども直近でかなり値上がりしてますよね。(今後もさらに上がりそうですが)

 

そこで次のステップです。

固定費の増加分についても商品の値上げをする必要があります。

さっきの例でいうと商品1個当たりの売上げは500円(400円+100円)、変動費は300円で、固定費は50万円でした。

では、固定費が50万円から60万円になったら、2500個売れば黒字になっていたところ、何個売れば黒字になるでしょうか?

 

答えは3,000個です。

 

「これならなんとかなりそう!」…そんな回答が欲しいわけではありません。

 

売上の数量を上げるにはそれ相応の努力が必要です。

ただし、取引先が値上げに応じてくれなかった場合は、もう努力するしかないということです。

 

ちなみに、もともとの2,500個売れば利益が出るっていう1個当たりの売上の金額は540円です。

 

さらに40円の値上げをするか、+500個売るか、あなたはどちらを選択しますか?

 

③未来を見通して

先にも述べましたが、値上げ交渉なんてそう何度も出来るものではありません。

 

今は540円でもいいかもしれません。ただし、今後も当分値上げラッシュは続くでしょう。

 

・機械が壊れたから、新しいものを購入しようと思ったら、想定外の金額だった。

・バイトを募集しても、今の時給では全然、人が集まらない。

 

こんなこともあり得ますよね。

原状回復だけでなく、未来も見通すことも必要かもしれません。

 

④ここまで出来たら完璧です

ここまで考えてきたのは、あくまでも「利益」計算です。

経営者はもう一つ考えなければいけない数字があります。

それは、「キャッシュフロー」です。

 

黒字倒産って言葉もあります。

利益の計算だけではなく「キャッシュフロー」を黒字化することも必要になります。

 

「利益」と「キャッシュフロー」の大きな違いが、「借金」と「設備投資」です。

 

「借入」の返済や「設備投資」はお金の支払はありますが、ほとんど経費になりません。この為、利益が出ているのにお金が増えないなんていう現象が起こりえます。

 

「利益」だけではなく「キャッシュフロー」も意識した商品価格を検討すれば、完璧ですね!

 

ちなみに、「キャッシュフロー」については、ここで詳しく説明すると長くなりますので、別の記事で解説します。

 

 

値上げしても大丈夫かな?

 

ここまでは、値上げをする場合の目安について説明してきました。

 

そこで、心配になるのが「本当に値上げしても大丈夫かな?」ってことでしょう。

 

先月までは、一個300円で売っていた商品を来月から500円にしますなんて、逆の立場にたったら簡単には承認しかねますよね。

 

「高すぎじゃねえ?もっとなんとかならないの?」

「じゃあ、別の業者から仕入れるわ」

 

なんて言われた時には背筋が凍る方もいらっしゃるかと思います。なぜかって?それは、自社の商品の価値を自身が正確に認識していないからです。

 

材料やそれ以外のコストが上がっていて、そこに自社が手を加えることによって商品として出荷されます。

 

コストが上がっていて、値上げをしないってことは、逆に言うと、自社の価値が減少していると認めることと同義です。

 

自分だけならまだしも、一つの商品を作るに当たり、家族や従業員の労力もかかっているはずです。

 

値上げをしないという決断は、そういった自分以外の方の価値も、実質値下げする行為だとお考え下さい。

 

もちろん、販売先もそう簡単には値上げを受け入れないケースもあるかと思います。

向こうも商売でやっていますので、コストを少しでも下げたいという思いは、全事業者共通ですので。

 

でも、そこで自分の作る商品の価値を正確に認識し、それを胸を張って伝えることが出来たら、相手にも伝わるかと思います。

 

値上げを提案することに躊躇したら、改めて自社の商品を見つめなおし、価値を再確認して下さい。

 

 

これからの時代を生きていく事業者に向けて

 

最後に、値上げというテーマから少しずれますが、これからの時代を生きていく事業者に対してのメッセージで締めたいと思います。

「失われた20年」とこれからでは、事業者の経営は大きく変化するものと思います。

 

「失われた20年」は物価も伸びず、経営者の置かれている環境にも大きな変化はありませんでした。

 

しかし、今後(既に始まっております)は経営者の置かれる環境は日々変化するものと思います。

 

昨年まで価値のあったビジネスが、今はほとんど価値がない(儲からない)といった現象は、今後珍しくはないでしょう。

 

「親の代からずっとこの方法(この金額)でビジネスをしている」

「今までもこれで大丈夫だったんだから」

 

なんて意見は今後通用しません。

例えば、あんなにいっぱいあった高級食パンのお店は、今や見る影もありません。

 

事業者に今後必須となってくることが

①自分のビジネスが今の時代に合っているか

②自分のビジネスの価値を客観的に伝えることが出来るか

ということでしょう。

 

どんぶり勘定はもう通用しません。

いつの間にかあなたのビジネスは、「儲からないビジネス」になっているかもしれません。

 

また、既に価値のないビジネスになっているかもしれません。

 

雅税理士事務所では毎月タイムリーに分析表をお送りすることで、お客様が現状の把握をするのに役立てて頂いております。

 

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