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前に進んでいるつもりが、同じところをぐるぐる回っているような感覚になる、みやび君。
友人の経営者はとても大きく目に映るが、自分は小さく感じてしまう。元々、友人に感化されて起業した。その友人と比較しても、当時のまま置いて行かれているように感じる。
結局、他人と比較しているうちは、自分の本当にやりたいことや立ち位置は見えてこないもの。みやび君は友人と比較することで、自分が本当に起業した動機が見えていない。
前に行く人を真似ることは、成果を上げるための近道ではあるが、いつかは自分自身の色を強く出すときがやってくる。他人の借り物の目標を掲げているうちは、いつまで経っても、劣等感に苛まれる。
さて、みやび君は自分を見つけることができるのだろうか。
毎日、同じ日が続いた。
朝起きて、家族と朝食を食べて、仕事にいく。仕事中は自分の仕事に集中し、帰ってきてから時々、事務作業をこなす。事務作業は妻も手伝ってくれるから、負担は大きくはない。
困ったことがあれば税理士に相談すれば、大方、解決していく。税理士が解決できないことは、解決できる他の人を紹介してもらう。仕事上の悩みは経営者の先輩方に時々相談すればよかった。
仕事が終わって帰ってきて、家族と一緒に晩御飯を食べる。時々、取引先との会食が入り、夜の帰りは遅くなる。休日は時々、早朝ゴルフに行くが、家族とのプライベートの予定があるときは断っている。
客観的に見れば幸せな日々が続いている。
しかし、問題はサラリーマンの時と、たいして変わらない生活を送っているのだ。
夜の食事は、友達と時々いくのが、取引先の人に代わっただけ。ゴルフはサラリーマンの時はしていなかったが、これは運動も兼ねているので、良いことだと思っている。
変わったことと言えば、責任が重くなったこと。仕事は全て自分の責任のもとにある。サラリーマンの時もそういう気持ちで仕事をしていたが、プレッシャーが全然違う。
問題だと感じているのは、責任が重くなったのに、金銭的な裕福さはそれほど向上していないこと。自由に使えるお金は増えたかもしれないが、殆どが仕事で必要なものばかりに使っている。
最終的に「俺は何で独立したんだっけ?」と同じところに戻る。
気分が上がらない日々を過ごしていた。
そんなある日。小太り君のところに勤めている元部下の20代後半の田中君から相談を持ち掛けられた。「みやび先輩に相談したいことがあります!今度、ご飯いきませんか?」目をキラキラ輝かせていた。もちろん、返事はOK。
相談する側の立場ばかりだったので、相談される側というのはうれしいものだ。
さっそく地元では有名な焼き鳥屋を予約した。ここは私が独立するきっかけとなった場所。仕事を終え、すぐにお店に向かう。突然の誘いだったため、妻には謝ったが「行っておいで。力になってあげなさい」と逆に背中を押してもらえた。
駆け足でお店に向かうと、田中君は私より先にカウンター席についていた。
私が到着すると田中君はその場を立ち上がり、会釈をした。「遅れてごめん、ごめん。座って」と私も軽く会釈しながら席についた。「生2つお願いします」とカウンター越しに店員さんに声をかけると、すぐに田中君が話し始めた。
「みやび先輩、実は、俺、独立しようと思っています」予想はしていたため驚きはしなかった。話を聞き続けた。
「小太り社長の元で働くのが嫌になったわけじゃないのですが、自分のやりたいことがあって、どうしてもそれを実現させたいんです」気合の入った言葉が続く。話の途中で生ビールがきて、乾杯をする。
田中君はビールを一気に飲み干した。「一気飲みして大丈夫か?」と声をかけるが「大丈夫です!」と元気な返事。
新しいビールを注文して田中君は、さらに話始めた。お通しの枝豆には目もくれず、自分の話に夢中になっている。
「ずっと思い描いていたんです。会社を大きくして、職人たちに良い職場を提供したいんです。今の職場でも出来るかもしれないですが、自分が若いうちにそれを成し遂げたいんです。今の職場だと先輩たちに気を遣わなければいけないし、やりづらいんです。すぐにやりたいんです」
熱がこもる。「小太り社長には相談したの?」と聞くと、まだしていない、とのこと。
「どうせ、お前にはまだ早いと言われることくらい僕にもわかります。そして、早いこともわかっています。自分にはみやび先輩ほどの実力もないですし、お客様もついていません。それは分かっているんですが、今やらないと後悔するように思うんです」
「そんなに急ぐ必要はあるの?」と聞くと、さらに熱がこもる。
「職人の世界って厳しいじゃないですか。給料はそこそこいいかもしれないですが、先輩の背中を見て育つのが当たり前の世界で、これも変だと思っています。若い人だって先輩たちよりも優秀な人はたくさんいます」
田中君は止まらない。ビールをさらに流し込み、話を続ける。
「職人って目立たないじゃないですか?俺はカッコいい仕事だと思っているし、もっと憧れられる職業にしたいんです!やりがいは沢山あるし、この仕事は素晴らしいんだ!ということを世の中に知らせたいんですよ」
田中君の熱量におされる。田中君の話を聞きながら、当時のことが頭の中を自然と流れてくる。
自分にはこれほどの熱量はあっただろうか。
どいう動機で独立したのだろうか。
どんな夢があっただろうか。
・・・
これといって、特別なことは浮かんではこない。それに比べて田中君は素晴らしい。自分の意志があるし、大きな目標も夢もある。自分と何が違うのだろうか。
自分と比較しながら田中君の話を聞く時間が続いた。
「みやび先輩は、どう思われますか?先輩の時はどうでしたか?」一通り話し終わって冷静さを取り戻したようだ。そして、私の順番がまわってきた。
「うん、やってみたらいいと思うよ」としか言葉にできなかった。でも田中君は嬉しそうだった。何の根拠もないが、田中君には良い未来が待っているような気がした。自分より上手くやれそうにも思えたし、自分より稼げるように感じた。
田中君との食事会を通して、独立すべきなのは、私のような人間ではなく田中君のような情熱に溢れる人がやるべきなんじゃないかという疑念が生まれた。
自分は独立するような人間じゃなかったんじゃないか。そもそも向いていないんじゃないのか。自分を否定するような言葉が流れていく。結局、独立してもしなくても何も変わらなかったんじゃないのか。私は何のために働いているのか。
食事を終え、田中君は深々と頭を下げて帰っていった。キラキラした表情、後ろ姿は大きく軽やかだった。一方で自分は、お酒を飲んだにも関わらず全く酔えなかった。田中君の熱量に感化されたものの、自分のモチベーションはあがらない。
夜風に当たりながら夜道をトボトボと歩いた。
何のために働くのだろうか。家族が幸せであれば、それで十分じゃないのか。大きな目標は必要なのか。
頭の中が疑問で埋め尽くされる。冷たい風が顔に当たる。田中君の熱量に比べて、自分は一体…
自分を卑下し続けて、自宅に辿りついた。娘は既に眠ってしまっていたが、妻が起きて待っていてくれた。
がんばれ!みやび君
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他人との比較から、自分の立ち位置が分かることがある。色んな人の考え方に触れることで、自分が見えていなかったものが見えるようになる。
だから、人の意見に耳を傾けることはとても重要なこと。
先輩であっても後輩であっても、どういう立場の人であろうと、学ぶことは沢山ある。
みやび君は、後輩であった田中君の話を聞いて、自分の現状を客観的に見れるようになる。田中君にあるのに、自分にないものが見えてくる。
これは、一人で考えても見えづらく、人からの刺激から得られることが多い。
誰かと話していると、突然気が付くことがあると思うし、人の話を聞いていて自分にも取り入れたいようなことを発見することがあると思う。
だから、八方塞がりになったときには、人に会うことが重要です。人に会い、刺激をもらう。必ず解決方法はあるし、見つかる。
ダメなのは自分の殻に閉じこもり、他者から自分を完全に遮断すること。これをしてしまえば、新しい刺激が自分に入ってくることはなくなる。答えの見つからないことばかりを考え続けて、メンタルはさらに病む。
とにかく、人に会おう。人に刺激をもらおう。それだけで解決への一歩を踏み出したと言ってもいい。
自分の前を進んでいる人に相談に行こう。
自分のために時間をとってもらえないと不安になるかもしれないが、自分が味わってきた苦しみを味わっている人に対しては、人は優しい。
苦しみを理解できるし、それを解放してあげたいと思っているものだ。だから、自分が抱えている悩みを素直に打ち明け、相談に乗って欲しい、と言うと良い。
そういう相手がすぐに見つからなければ、税理士に相談に行けばいい。
税理士は多くの経営者と日々向き合っているため、相談にのってくれる。あなたの事業の発展が税理士の事業の発展につながる。だから、税理士はあなたのためになることを考えることができる。
あなたに良くなって欲しいと思っているし、豊かになって欲しいと思っているし、ビジネスが上手くいってほしいと願っている。その立場から、話してくれるはずだ。
もしかしたら、解決できる人を紹介してくれるかもしれないし、解決できた他の事例を教えてくれるかもしれない。税理士の元には起業家、経営者からたくさんの情報が集まってくるから、引き出しは多い。
そのために顧問契約を結んでいるのだ。税理士を使え!
■過去記事
【第26話】みやび君、独りに戻って自由になったのか地獄に戻ったのか
■次回記事